殴り書き

オタクの妄言

2022.05.21

 

昨日、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻の卒業制作展のカタログが届いた。

コロナウイルスの影響で学内ではたったの4時間しか展示ができなかった、令和三年度卒業生のものだ。その後の都美では会期中無事に展示を終えたようではあったが。

そういう事情もあって───元々気になっている作家さんがいるというのもそうだが───ある種の好奇心から今回カタログを購入させてもらった。80部限定なので欲しい方はお早めに

(Vibration | vibration)。

 

読んだ、というか見た。正直言って、生で見ないことには分からない部分というのが少なからずあった。ただ、コロナウイルス等の影響が少なくないなかでひたむきに前を向く姿がそこにはあった。時勢を押し返すようなパワーがうっすらと感じられた。神垣凪沙さんが特によかった。

私は特段絵画に明るいわけではなく技巧的な部分に関しては全くの無知と言ってもいい。こういう時すぐに作家の背景も知らないし……と続けたくなるのだが、略歴を読んで何かをわかった気になる方が無意味なので止めておく。真に素晴らしいと思えるものには技術も文脈も背景もすべて些事だからだ。

 

このカタログを購入してよかった点のひとつとして挙げられるのは、自画像が掲載されていたことであろうか。これはSNS等ではなかなか拝見できないので、とても興味深く見させてもらった。毎年芸大では卒制とともに自画像も展示するということは知識としてあったのだが、いやよく考えられているな……と感嘆してしまった。特に印象的なのが杉山日向子さんの自画像で、マスクを指でずらしながら目線は上へと向いている。自意識が高い、と一目みて感じた。そしてそういう人間が私は大好きだ。元々好きだったけれどもっと好きになってしまった。近年蔓延しているコロナウイルスの影響であろう、マスクをした姿というのは今だからこそ描けた自画像だ。それを素直に切り取ったのもまた好感が持てる。

 

自画像、といえば。ブルーピリオドの一次試験で八虎達に課された課題も同じく「自画像」だった。自画像というものは自分をどのように位置/価値づけしているかがはっきりと浮き彫りになるものだと考える。八虎は一次試験ではあの自画像を描いたが、卒業する時にはきっとまた違った自画像を描くだろう。

 

最近の本誌の展開が不穏だと言っておられる方々を多々目にするが、私が矢口八虎が中途退学しないと考えている理由がこの自画像にある。まあ母に頭を下げてまで入りたかった芸術系大学としては最難関かつ最高峰の大学を辞めるメリットって……""無""だし……。違う学校であればあるいは。メタ推理ゆえ大っぴらにツイートをするのは憚られたので、この機会にこっそりと書き記しておく。

あと、パープルームの9期生として入った彼の話をしよう。国公立の芸術大学志望だったけど結局入れなくて芸術系の私立大学に入ったというあの子だ。ごく個人的な意見だが彼はパープルームに入ってよかったのではないかなと思っている。大学を辞めて来たのかどうかは知らないけれど。アーティストとして今後やっていきたいなら、それが最短に近いかつ可能性の高い方法だったと思う。ゲンロン(梅津庸一×與那覇潤 司会=堀安祐子「本当の『平成美術』を語ろう――アートと歴史でふりかえる平成の30年」 @parplume @phappyyy #ゲンロン220418 ゲンロン完全中継チャンネル | シラス)で公開面接みたいになったのはちょっと笑っちゃったけどあの時に梅津さんが話されていたことこそが本質だと思った。大学を出たって画業だけで食べていける保証なんてないからな、本当に。

こういう話をしていると過去の自分を振り返ってしょぼ……となってしまう。叶わない夢がいちばんかなしい。ただ夢を持って何かをやっている人間のことは本当に尊敬するし応援したいと思っている。がんばれ、みんな!

ていうか人間てみんな生きててえらいな♪おわり♪